―誰かと話したいと思った。
なんとなく寂しい思いをしているのか、そう思うことが増えた。孤独を感じるときが確かにある。人と会ったらすっきりするかと思って、人と会ってみる。でも、自分の中の孤独感は埋まらなかった。むしろ、増えていく気もした。
人に対して求めている。相手は「誰か」だと思っていた。でも、誰と話しても、会っても、埋まらない。どんどん削られていく。
―求めているのは「誰か」ではないのかもしれない。
浮かび上がった存在。それは、小さい頃の自分だった。小さい頃、と言っても14歳くらい。ただ、私にとっては小さい自分だ。小さくて、弱くて、もろくて、今にも壊れてしまいそうな、自分だ。でも14才ではない。小さな自分でも、大人にならなくてはいけなかった。だから14歳。
―14歳の自分と対話をしないと。
そう気が付いてから、結構日にちが経った。向き合うのは怖いと思った。逃げたい。逃げだしたくてたまらない。誰と話しても、誰と会っても、埋まらない思いは自分の内面の問題だった。私が、私の話を聞かないと。私が、あの頃のつらさをわかってあげたい。私が、小さな私を抱きしめないと。
ー今なら小さな私に会える。抱きしめてあげられる。
昔の記憶には頑丈な鍵をかけて、心の奥底に仕舞ってきた。もう、取り出せないように。もう、思い出せないように。人間には変化が起きる。どうやら、心の奥底で記憶の鍵が開いている。ずっと、会えないと思っていた。会いたくないとまで思っていた。でも、今なら会いに行ける。「大丈夫?」と声をかけてあげられる。「怖かったね」と言ってあげられる。小さかった私の手を取って、抱きしめてあげたいと思う。
自分の変化に戸惑っている。現時点で気持ちのいいことではない。ただ、前向きではある。
求めているのは「誰か」ではなく、「自分」ということに気が付けたことが、この話の全てである。
この記事は備忘録。未来の私へ。
CHIHIRO