Chihi’Log

物語の主人公はいつだって自分だ

14才の私へ

 

 

「あぁ、生きてる。」



あの日、
大きな海の果てに
力強い夕陽を見た。

 



10年以上も前のこと。

私はあの夕陽に
小さな希望をもらった。


小さいけれど
当時の私にとっては
かけがえのない宝物だった。

 

 

絶望の中にいた。

涙さえ出なかった。

本当に苦しくなると
人は感情が出せなくなるということを
14才にして知った。


言葉にできない思いと
伝えられない自分の無力さ。

わかってほしいのに、
わかってもらえなかったから


怒りや
哀しみ
浴びた妬みと嫉妬
突き刺さるひどい言葉たち

すべて
こころの奥深くに
仕舞った。


「今日こんなことあったんだよ。」

「聞いてほしいよ。」


その一言を
ぐっと飲み込んでしまうほど

言って意味のないこと
言わないで意味のあること

そんなことを理解していた。


真実を知りたかっただけの私に
誰ひとり
本当のことは教えてくれなかった。



生と死。

誰かを憎み、恨むこと。

小さなこころで必死に
考えていたあの頃。

本来白くあった私のこころは
黒い煙で濁っていき。



「私は大人になるまで生きられないだろう」


そう思った14才の夏。

親友と隣り合って見た
あの海辺の夕陽を
私は一生忘れない。


大きくて、広くて、
青すぎるくらい青い海と

オレンジ色に
ただ真っ直ぐ私に光を与えてくれた
あの、夕陽を。


生きることに疲れた私を
生きた心地まで連れて行ってくれた。

 


私は、生きているんだ。

そう。今、ここで息をしている。

 


そう思ったら
涙がどっと溢れた。

ぼろぼろ泣いた。


こころの奥に仕舞って
出さないように、
出せないようにしていた
感情や涙を
やっと出せたような気がした。

 


綺麗なものを見て
こころが動かされる。


そんな経験を
人生で何度もしてきた。


その中でも
目に焼き付き
心に留めたこの景色だけは
私は一生忘れてはいけない。

 

生きているということを。

生きていくということを。


25歳になった今
海を見て思う。

私は地に足ついて生きてきたんだ、と。


生きることへの正しさなどないだろう。

それでも誰もが
自分の人生への正解を出しに
生きている。


あの頃が私の人生観を変えた。

ひどいものを見たり
聴いたりしても
ちゃんと癒してくれるものや人は
いるんだということ。


14才。
私はちゃんと、生きていた。

このからだで、
このこころで、
生き抜いたんだ。


生きてくれてありがとう。
生きることを選んでくれて
ありがとう。


25歳。
今の私はこの人生を
とっても誇りに思っている。
とっても大事に思っている。


私は、ちゃんと大人になった。


だから。

 

「生きていてよかったよ。」

 

 

 

 

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